"ありがとう"で繋ぐ心結び

コラム

世界の父の日から見える「ありがとう」の多様なカタチ ~感謝の表現はいろいろ~

6月の第3日曜日は「父の日」。私たちにとって馴染み深いこの日には、お父さんへ日頃の「ありがとう」を伝えるためにプレゼントを贈ったり、特別な時間を過ごしたりします。しかし、世界に目を向けると、その「ありがとう」の表現方法は実に様々。一見すると驚くような風習も、それぞれの文化における父親への感謝の気持ちが込められた、ユニークな「ありがとうのカタチ」なのです。今回は、そんな世界の父の日を巡り、多様な感謝の表現に触れてみましょう。

ドイツの父の日:「解放」という名の感謝? 男たちの祝祭

ビールの国ドイツの父の日は、キリストの昇天祭(イースターから40日後の木曜日)にあたり、「男の日(Männertag)」とも呼ばれます。この日は、男性たちがグループで手押し車にビール樽を乗せて練り歩き、野山で酒盛りを楽しむという、お祭り騒ぎのような一日。一見、日本の父の日のような静かな感謝とは異なるように見えますが、これもまた一つの「ありがとう」の表現と言えるかもしれません。

日頃、家族のために勤勉に働く父親たちが、この日ばかりは羽目を外し、仲間たちと気兼ねなく楽しむ。それは、社会や家族からの「いつもご苦労さま、今日は楽しんで!」という、ある種の解放を伴った感謝のメッセージなのかもしれません。春の訪れを祝う伝統的なお祭りの要素も含むこの日は、父親たちが日頃の労をねぎらい、仲間同士でその喜びを分かち合う、ドイツ流の賑やかな「ありがとう」の形と言えるでしょう。

カトリック諸国の父の日:聖ヨセフに捧げる、敬虔な「ありがとう」

イタリアスペインなどカトリックの影響が強い国々では、3月19日の「聖ヨセフの日」が父の日です。イエス・キリストの養父である聖ヨセフは、誠実で献身的な父親の模範とされています。これらの国々では、父の日は宗教的な意味合いが深く、家族で教会を訪れ、父親に祈りを捧げることが「ありがとう」の表現となります。

イタリアでは「ゼッポレ・ディ・サン・ジュゼッペ」という伝統菓子を家族で味わい、父親をもてなします。ここには、理想的な父親像への敬意と、その教えを受け継ぐことへの感謝、そして家族の絆を大切にする心が込められています。静かで敬虔な祈りや家族団らんの中に、篤い信仰心に根差した深い「ありがとう」が息づいているのです。

タイの父の日:国王への敬愛と重なる、国民的な「ありがとう」

タイの父の日は、長年、国民から絶大な敬愛を集めたプミポン前国王の誕生日(12月5日)とされてきました。この日、多くの国民が前国王のシンボルカラーである黄色い服を身にまとい、父親には「カンナ」の花を贈って感謝を伝えます。

この風習は、単に個々の父親への感謝に留まらず、偉大な「国の父」とされた国王への敬愛の念と強く結びついています。国民が一体となって父親に感謝を示す姿は、国全体で「ありがとう」の気持ちを共有し、増幅させているかのようです。そこには、家族の父への感謝と、国を導いた指導者への感謝という、二つの大きな「ありがとう」が美しく調和しています。

カナダの父の日:広大な自然と家族愛に育まれる「ありがとう」

北米のカナダでは、アメリカと同様に6月の第3日曜日が父の日です。カナダの父の日は、家族との時間を大切にする、温かい雰囲気の中で祝われます。多くの家庭では、父親の好きな食事を用意したり、レストランで家族団らんのひとときを過ごしたりします。プレゼントは、ネクタイや靴下といった定番のものから、父親の趣味に合わせたキャンプ用品や釣り道具、スポーツ用品なども人気です。

カナダらしい「ありがとう」の形として、広大な大自然の中で父親と一緒に過ごすことも一般的です。公園でのピクニック、湖畔でのバーベキュー、ハイキングや釣りなど、アウトドア活動を通じて、父子の絆を深め、感謝の気持ちを伝えます。また、カナダでは実の父親だけでなく、継父や祖父、あるいは父親代わりの存在であるメンターなど、幅広い「父親像」に対して感謝を示す傾向があり、子どもたちが手作りのカードや工作を贈ることも、心温まる大切な習慣として根付いています。物質的な価値以上に、共に過ごす時間や心のこもった手作りの品を通じて「ありがとう」を伝える、カナダの父の日は、家族の温もりと自然への愛が感じられる素敵な一日です。


私たちが普段何気なく使っている「ありがとう」という言葉。その伝え方には、決まった形などありません。大切なのは、相手を思い、心を込めてその気持ちを表すこと。世界のユニークな父の日の風習は、私たちに「ありがとう」の表現の豊かさと、文化の多様性の素晴らしさを教えてくれます。

今年の父の日、あなたはどんな「ありがとう」を伝えますか? 世界の様々な「ありがとうのカタチ」に思いを馳せながら、あなたらしい感謝の表現を見つけてみるのも素敵かもしれませんね。

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


RECOMMEND
RANKING
DAILY
WEEKLY
MONTHLY
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  1. 1
  2. 2
  3. 3

RELATED

PAGE TOP
目次