忙しない日々に追われていると、つい忘れがちになってしまうけれど、私たちの周りには、そっと寄り添ってくれる優しさや、見守ってくれる温かな存在がたくさんありますよね。そんな当たり前のようでいて、かけがえのない「ありがとう」の気持ちを、ふんわりと思い出させてくれる素敵な絵本に出会いました。
偕成社から出版されている「ありがとうのえほん」。ページをめくるたび、まるで甘いお菓子箱をそっと開けたときのような、ときめきと幸福感に包まれる一冊です。
この絵本を描いたのは、アメリカで1950年代に活躍したフランソワーズ・セニョーボさん。その絵は、思わず「食べちゃいたい!」と声に出してしまいそうになるほど、愛らしい魅力にあふれています。にわとりさん、めんどりさん、私たちを照らすおひさま、そして心安らぐおうち……。私たちの世界を形作るたくさんのものへ、まっすぐな感謝の気持ちが、温かく優しい筆致で描き出されています。
絵本を彩るのは、明るい黄色に心ときめくピンク、澄んだきれいな水色、そしてどこか懐かしさを感じるようなくすんだ赤。まるで宝石箱をひっくり返したような、美しいキャンディー・カラーのハーモニーは、見ているだけで心がうきうきと弾みます。登場する動物たちや人々も、まるでクッキー型で抜いたような、ころんと丸みを帯びた優しいシルエット。その一つひとつが愛おしく、ページをめくる指先までも優しくなっていくようです。
この「ありがとうのえほん」が生まれたのは1947年頃とのこと。だから、ページの中には、今の私たちの暮らしとは少し違う、時代の香りや文化の違いを感じさせる場面も描かれています。でも、不思議と古さを感じることはありません。むしろ、その素朴さやおおらかさが、現代を生きる私たちの心に新鮮な感動を与えてくれるのです。
「ああ、私たちの世界って、こんなにも温かくて、素敵なもので満ち溢れているんだな」。絵本を読み進めるうちに、そんな風に世界がきらきらと輝いて見えるから不思議です。普段何気なく目にしているもの、当たり前のように享受していること一つひとつが、どれほど尊く、感謝すべきことなのかを、この絵本は静かに、けれど確かに教えてくれます。
子どもたちと一緒に読むのはもちろんですが、毎日を頑張るあなた自身のために、ゆっくりとページをめくる時間を持つのも素敵です。慌ただしい日常から少しだけ離れて、絵本の世界に浸れば、心がふっと軽くなり、優しい気持ちで満たされるのを感じられるはず。
身の回りのすべてのものに「ありがとう」と伝えたくなる、そんな魔法のような絵本。大切な誰かへの贈りものとしても、きっと喜ばれることでしょう。あなたの心にも、温かな感謝の灯がともりますように。
出版社名: 偕成社
商品名: ありがとうのえほん 作・絵: フランソワーズ・セニョーボ 訳: なかがわ ちひろ
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